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フラップ法(頭皮弁移植法)

図1  フラップ法

フラップ法とは、側頭部など、頭髪の残る比較的広い面積の頭皮の三辺を切り離し、残った一辺を中心にぐるりと回し、ハゲた部分に移動させるという方法です。三辺を切り離され、長い舌状になった頭皮弁をフラップといいます。普通、切り取る幅は2.5cmくらいで、長さはさまざまです。側面の皮膚を切り取ったところは縫いあわせます。左右両側から頭皮弁を取り、半分ずつの額をカバーする場合と、片側からだけ長い頭皮弁を取り、前額をカバーする場合があります。(図1)移植する頭皮弁は、面積が大きいので、自毛移植手術のグラフトのように、移植した直後に皮下組織の毛細血管ができて、十分な栄養が送られるというわけにはいきません。そこで、切り離されずに頭皮につながっている部分を通る主要血管を残しておく必要があります。血流不足になると複雑な組織である毛髪はすぐに死んでしまいます。
(メリット)
毛髪回復手術のなかで、最も短時間で十分に密度がある長い毛を得ることができます。
(デメリット)
フラップ法で考えられる最悪の合併症は、移植した頭皮弁の壊死です。ごくまれに発生する可能性があります。もし、この合併症が起こった場合、移植した毛は全部抜けてしまいますし、頭皮弁を移植した前頭部には幅広い、醜い瘢痕が残ってしまいます。この瘢痕は自毛植術でも隠すのが難しいです。

・毛の質と生える向き
フラップした部分の毛の生える方向は、普通生えている毛の向きとは正反対になります。また、側頭部から移動した毛は太くて密度がありますからそうした毛が反対向きに生えているバンド状のエリアが突然前頭郡に出現したら、どう見ても不自然な感じがするはずです。せっかく髪の毛が生えても、常にオールバックにしかならず、お好みのヘアスタイルに整えることができません。これでは困ります。またフラップ法による、生え際の不自然さをカバーするために、さらに前頭部にマイクロ・グラフトの自毛移植術を追加する必要があるほどです。
・フラップの後ろ側
高密度の太い毛が生えている幅二・五〜三センチのバンド状のエリアの後ろ側には、その人の薄くなった毛が続いています。濃い部分の後ろなので、その薄毛はよけいに目立つことでしょう。また、その部分の脱毛が進行してしまうと、前頭部のバンド状の濃い毛だけが残って、後頭部はまったくハゲてしまうという事態も起こりかねません。これもきわめて不自然です。
・フラップ上の毛
いったん、フラップ上の毛が抜け始めると、縫い合わせたところの傷はもう隠せなくなり、せっかく不自由なカツラを避けるために植毛したのに、結局、またカツラで隠さなければならないという事態にもなりかねません。

フラップ法のバリエーション
フラップの幅を二・五〜三センチと大きく取らず、その代わりに三〜四ミリの細いフラップを両側の側頭部から何本も取り、ハゲた頭頂部に交互にクロスさせて、全体をカバーするという方法もあります。フラップの幅を細くして皮下組織の毛細血管からすぐに血流が送られるようにしているのですが、これでも十分とはいえず、脱毛がよく起こります。また、頭頂部に毛の生えている細い筋が幾重にも交差しているのを見ても、自然とは言いがたいものです。さらに、このフラップ上の毛が抜けると、何本もの傷痕が頭のてっペんに残ることになります。


スカルプ・リダクション (頭皮縮小法)
一九七八年、カナダの医師たちが頭頂部の薄毛の新しい治療法を発表しました。ハゲている部分の頭皮を切除して両側を縫い合わせ、側頭部や後頭部の頭皮を、そこに生えている毛とともに引っ張り上げ、ハゲている面積を小さくしようというものです。ハゲている部分が大きい人では、それを縮小させてから、小さくなった面積に自毛移植を行えばよいのです。ハゲの面積が大きい人では、自毛移植を行おうにも、限られたグラフト数しかとれません。そういう人には朗報となる新治療法でした。ただ、どのくらいハゲている頭皮を切除できるかというのは、個人差があります。生まれついての皮膚や組織の伸縮性は、人それぞれだからです。スカルプ・リダクションは、切り取る頭皮の形により、種類がいくつかに分けられます。いちばん多く使われているのが、縦型リダクションと三角型リダクションです。

・縦型リダクション

図2 縦型リダクション


いちばん頻度の高いタイプのリダクションです。図aのように頭頭部のハゲている部分に線を引き、それを長いほうの直径としてハゲている頭皮を、図bのように楕円形に切除します。ここまでが第一回目のスカルプ・リダクションです。さらに二回目の切除をすると、図Cのようにハゲの頭皮はなくなり、最後は図dのように額の点々の部分に自毛移植を行えばよいわけです。図aから図Cまでは二回の手術で終了するとは限らず、三〜四回以上になる場合もあります。この手術は簡単なものですが、しばしば頭の中央に毛の生える向きが正反対になる溝ができ(図e)、不自然でみにくく見えることが難点です。

・三角型リダクション

図3 三角型リダクション


三角型は、手術後に残る傷痕の形がメルセデス・ベンツのマークに似ていることから、通常、メルセデス・リダクションと呼ばれています。この方法は縦型と比べて、ハゲの面積を大きくとれるというメリットがあります。第一回目のリダクションとして、図fのように斜線部を切除します。ハゲの面積が狭くなったところで、さらに二回目のリダクションを行います (図g)。こうして何回かの切除を繰り返すと、図hのようにハゲている面積がなくなり、メルセデス・ベンツのマークの傷痕だけが残ります。最後に額に自毛植毛で生え際をつくります (図T)。このほかにも切除する頭皮の形によって、いろいろなバリエーションがあります。ハゲている部分の面積の広さや部位などによって、もっとも適したタイプが選択されます。


スカルプ・リダクションの応用型
スカルプ・リダクションを発展させた応用型も、いくつか試みられています。

・ヘアリフト

図4 ヘアリフト


ヘアリフトとは、スカルプ・リダクションを発展させた手術の一つです。普通のスカルプ・リダクションは、頭皮の切除の際、大きな主要血管の手前まで頭皮をはがして切るのですが、ヘアリフトは主要血管の下まで頭皮をはがし、頭皮の伸縮を多くして、より大きい面積の頭皮を切除するものです。主要血管へのダメージを防ぐため、事前に (一カ月くらい前)、その部分の主要血管を切断して、結んでおきます。この手術方法だと、普通のスカルプ・リダクションのように何回も繰り返す必要がありません。ただ、一回の手術は大がかりのものとなり、全身麻酔を使い、病院で行う必要があります。少ない数の大手術で済ませるか、回数が増えても小さい手術にするかは、個人の選択によります。

・スカルプ・エクスパンダー

図5 エクスパンダー&エクステンダー


スカルプ・リダクションの場合、頭皮の伸縮性には個人差があり、広い面積を縫い合わせるには頭皮の伸縮をよくしないといけないケースもあります。そのために考案されたのが、この方法です。シリコンでできた風船状のもの (エクスパンダー) を、頭皮と頭蓋骨の間に挿入します。挿入口の傷が癒えた二〜三週間後、その風船の中に注射器で生理食塩水を何回かに分けて注入し、徐々に膨らませていきます。そうしてニ〜三カ月の間、頭皮を伸ばしておいて、スカルプ・リダクションを行います。エクスパンダーを入れる手術は全身麻酔をして、病院で行わなければなりません。しかも、溶液を注入してエクスパンダーを膨らませるときには、かなりの痛みが続きます。しかし、それ以上の難点は、溶液を注入したあとは頭部が外に膨れるため、火星人のように頭部が大きく見えるなど、長期間に及ぶ著しい外見の変化に耐えなければならないことです。頭皮の伸縮をよくするためとはいえ、この方法を試してみようという勇気のある人はきわめて少ないようです。

・スカルプ・エクステンダー
 両側にフックのついたシリコン・シートを伸ばして、頭皮の下に入れ、シリコンの弾力性でハゲた頭皮を引きのばし、一度にハゲた頭皮をたくさんとるという方法です。


スカルプ・リダクションのメリットとデメリット
 ハゲている面積が広い人には朗報ともいえるスカルプ・リダクションですが、やはり、この方法にもメリット、デメリットがあります。以下、箇条書きしておきます。
(メリット)
・手術にかかる時間が短い。
 普通の頭皮の伸縮性のある人で、頭領部の幅三〜四センチ、長さ一二センチの楕円形
 のハゲを切除するのにかかる時間は一時間ほどです。皮膚に伸縮性のある人では、もっ
 と時間を短縮することができます一回の手術にかかる時間はきわめて短いといってよ
 いでしょう。
・すぐに効果が見える。
  手術後はハゲている部分の面積が狭くなりますから、すぐに頭髪回復の効果が目に見
 えます。ハゲが小さくなったと実感できるでしょう。
(デメリット)
・ストレッチ・バック
  頭皮を伸ばして縫合させた周囲に、「ストレッチ・バック」と呼ばれる毛髪の後退が
  見られることがあります。スカルプ・リダクションで幅三センチのハゲを取り除いたに
  もかかわらず、周囲に一・五センチずつのストレッチ・バックが生じると、元通りにな
  ってしまいます。手術をした意味がなくなってしまうのです。
・脱毛の促進化
   この現象は五〇パーセントぐらいの患者さんに見られるものです。スカルプ・リダク
  ションの回数が多いはど、脱毛の促進化がよく起こります。たとえば、スカルプ・リダ
  クションしなければ数年かかる脱毛が、数週間、数カ月単位で起こつてしまうのです。
  多量の毛が一度に抜け、再び生えることはありません。こうなると、患者さんのショッ
  クはより大きくなります。原因はよくわかっていませんが、頭皮を伸ばすことで、血流
  が悪くなるためではないかと推測されています。
・完成度の低さ
  一五回、スカルプ・リダクションしても、完璧にできない患者さんもいるそうです。また、
 必ず頭頂部に傷痕が残ります。前頭部はできないので、そこだけ植毛しなければならないのも
 手間がかかります。
・頭髪密度が悪い
 生涯生え続ける頭髪数は遺伝子で決定され、頭髪回復術で頭髪数を増やすことは
 きません。毛髪の部位を再分配するだけです。そのため、スカルプ・リダクションした
 ら側頭部と後頭部の密度が悪くなり、植毛の効果に悪影響を与えます。
・頭皮が薄くなる
 頭皮を伸ばすので、皮膚が薄くなります。一時的ですが頭皮の感覚が鈍くなることもあります。



レーザー自毛移植術  
自毛移植するためには、まず移植される局部に針などで小さな穴を開け、その穴に移植片を植え込んでいきます。穴を開けるとき、針の代わりにレーザーを使う方法を 「レーザー自毛移植術」といいます。この方法はドイツで広く行われてきました。ところが、五年ほど前からレーザー植毛の失敗例が次々と報告され、大きなスキャンダルになりました。アメリカの植毛専門医でレーザーを使う医師は一人もいません。レーザーを使うのは全部、皮膚再生術のためにレーザーを購入し、サイドビジネスとして自毛移植術をする医師たちです。彼らはふつう二年も開業しないうちに他州に引っ越してしまいます。というのも、毛髪が再生するまで何ケ月もかかります。レーザー植毛の失敗が発現したときには、もう何百人の患者さんに施術したあとです。アメリカ社会ではすぐに医療事故につながりますから、一度に何百人の患者さんに起訴されたら、もう破産を宣告して他の州に引っ越さざるをえないのです。植毛界の世界的権威で、最も立派な教科書を編集したカナダのドクター・ウォルターも五年前からレーザー植毛を研究してきましたが、一九九七年の世界的な学会のときに、「レーザー自毛移植法の植毛としての唯一のメリットは広告だけです。もう一切、レーザー植毛の研究を中止します」と宣言しました。

 レーザー植毛が失敗する理由として、次の二点が挙げられています。
 @レーザーで穴を開けると同時に、血流も一緒に遮断してしまいます。植毛した毛は酸素
  も栄養も血液から供給されるので、血流がなくなったら、せっかく移植した毛もうまく成長
  してくれません。乾燥した土に花を植えても、うまく生着しないのと同じことです。
 Aレーザーの高いエネルギーが皮層と組織を蒸発させて植毛のための穴を開けることにな
  るので、毛が再生するのに時間がかかります。また、密集的にレーザーで穴を開けると、そ
  の部分の皮膚が壊死する可能性さえあります。
  以下、レーザー法のメリットとデメリットを整理しておきます。レーザー法は最近急速に
  普及していますが、問題も多い方法だということを理解しておいてください。
(メリット)
・レーザー毛髪移植の唯一のメリットは、新しい方法を普及させるという、市場開発にしか
 認められません。
(デメリット)
・レーザー光線は、組織を焼き、既存の毛髪を傷つけ、移植部分のまわりの血管を密封します。
・レーザーで毛髪移植を行った所の毛髪成長率は、明らかに低いことがわかっています。
・術後の外層形成時間が長くなります。
・毛髪の成長も遅いことが明かになっています。